動脈硬化症

すべての元凶がここにある

 動脈硬化症というのは、文字どおり動脈が硬化してしまうことで、高血圧の人にとっては、爆弾を体内に抱え込んだような状況といっていいでしょう。

 血管が硬化してしまうと、血管がつまりやすくなったり高い血圧に耐えられなくなります。人間、つねに一定の血圧を保つことができれば少々血管が硬化していても大丈夫なのですが、実際は上がったり下がったりしています。

 体を少し動かしただけでも、中高齢者は動悸が激しくなったり、血圧が上昇します。精神的な要因もあります。カーッと激怒すれば、誰でも血圧が2~3割はアップします。血管が硬化していると、急激に高まった血圧に対処することができなくなり、プツンと血管が破れてしまいます。

 そもそも動脈硬化は血液の流れを阻害するもの。血液のスムーズな流れは健康の基本でもあります。したがって、この動脈硬化症というのは、ある意味では病気の根源ということができます。

最悪な高血圧との組み合わせ

 動脈硬化とは、そもそも動脈内が年齢とともに狭く、かつもろくなっていく症状で、これがすすむとやがて、閉塞した状態になることをいいます。

 一種の血管の老化現象ともいえますが、恐ろしいのは高血圧と組み合わされた場合です。動脈硬化は血圧の正常な人にも発生しますが、概して高血圧状態が長く続くと動脈硬化は発生しやすく(その逆も多いケースです)、また高血圧と組み合わさることによって、さまざまな恐ろしい病気を引き起こす原因をつくってしまいます。

2種類ある動脈硬化

 動脈硬化には主として、2種類あります。一つは、大動脈や冠動脈、脳底動脈、腎動脈などのある程度の太さをもった血管に発生する粥状動脈硬化、もう一つは細い動脈に発生する細動脈効果です。

 粥状動脈硬化は血管内面にコレステロールなどの脂質が沈着、血管が堅くなりしだいに盛り上がっていき内腔が細くなってしまうもの。血液の流れそのものが悪くなってしまいますから、毛細血管等への血液の供給量や圧力が低下し、末端組織が飢餓状態におちいります。

 ですから、どの部分に血液を供給している血管が粥状動脈硬化を起こしているかによって、具体的に発生する病気、症状に大きな違いがあらわれます。

 心臓に血液を供給している冠動脈ならば、心筋梗塞、狭心症といった症状の発生が予測されます。

 脳動脈ならば脳への血液補給が妨げられ、脳梗塞などの兆候があらわれる危険があります。腎動脈ならば腎性高血圧になります。

脳への影響が大きい細動脈効果

 粥状動脈硬化を太い水道管のトラブルにたとえるならば、細動脈効果は家庭に配管された蛇口に近い部分のトラブルとなります。台所の蛇口が壊れれば、たちまち水があふれてしまうように、細動脈効果は直接に大きな被害をおよぼします。

 脳には無数といっていいほどの毛細血管が走っています。その一本一本が脳細胞に酸素と栄養を供給する重大な働きがあります。

 ところが、この細動脈効果になってしまうと、脳の毛細血管は目詰まり状態を引き起こしやすく、血液の流れが滞ります。

 しかも、こうした状況下で高血圧が加わると、細くてもろく、しかも血液の流れがスムーズでないので、たちまち血管はパンクしやすく、パンクした場合、脳内出血という異常事態を引き起こしてしまうのです。

老化現象を自覚し、無理しないこと

 この動脈硬化はいわば血管の老化現象の一つです。歳とともに血管がもろくなっているんだということを自覚し、無理をしないことが大切、とくに高血圧ぎみの人は、ちょっとした油断で脳内出血、脳血栓などのトラブルに巻き込まれてしまいます。

 温度が下がると筋肉が縮こまり、血管も収縮します。また、排便などで力みすぎてもやはり筋肉が収縮し血圧が上がります。冬場のトイレで脳卒中で倒れることが多いのは、こうした事情があるからです。