本態性高血圧
高血圧をきたす特別な病気がないのに生じた高血圧。これが本態性高血圧です。つまり、体質的なものです。高血圧の7~8割がこのタイプです。
原因として考えられている説がいくつかありますが、まだ決定的なものはありません。有力な考えには、脳神経系の異常によるという説、腎のナトリウム排泄異常説、細胞膜とくに血管壁を収縮させる平滑筋細胞の膜の異常によるとする説や内分泌異常説等ありますが、とくに有力なのは脳神経系のなんらかの異常により交感神経系の刺激が起こりやすくなり、血管の収縮と心拍数が増す結果血圧が上がると考える脳神経系異常説と腎からのナトリウム排泄異常説の二つといわれていますがまだ決定的ではありません。
本態性高血圧は、軽いものだと食事制限などの生活の工夫によって、血圧をコントロールできます。
また、さらに重症の高血圧も最近優秀な降圧剤の開発と臨床応用が可能となったために従来よりコントロールがやりやすくなり、かつ合併症進行の予防、コントロールがよくなってきています。ただし、短期間の服薬で治療が終わるわけでなく、一般療法を含めて根気よい治療が必要です。
腎性高血圧
本態性高血圧以外で、高血圧の原因になる病気がはっきりしている場合を「二次性高血圧」といいますが、この腎性高血圧は二次性高血圧の頻度の中のトップに位置しています。
腎性といっても、具体的にいいますと、急性腎炎、慢性腎炎、腎盂炎などがあります。腎臓はいうまでもなく、濁った血液を浄化し、不要になった物質を尿として処理します。
ここに障害が発生するとナトリウムや水の排泄に障害が起こり、このため体液量が増加し、やがて高血圧につながります。
腎血管性高血圧
これは腎臓そのものが異常をきたすのではなく、腎臓につながる血管が狭窄を起こすことにより、腎臓に流れ込む血液量が低下し、この結果、レニンという昇圧ホルモンが分泌されて、高血圧になります。狭窄というのは、血管が細くくびれたようになってしまい、血液の流れが滞ってしまいます。
内分泌性高血圧
副腎や脳下垂体甲状腺のホルモンの異常によって発生する高血圧のことです。
副腎皮質からは、アルドステロンというホルモンが分泌されています。これは腎臓に機能して、体内の水分調整を行います。ところが、副腎に異常が発生し、このホルモンが過剰に分泌されると、血液中の水分が増加、循環血液の絶対量が増えることにより、血圧が上昇してしまうのです。
また、副腎の糖質コルチコイドというホルモンが過剰に分泌されると、クッシング症候群といわれる顔が満月のように膨れあがる症状をきたし、高血圧におちいります。いずれも副腎皮質の腫瘍によって発生するもので、注意が必要です。
心血管性高血圧
大動脈炎症候群という比較的日本人に多い病気では動脈炎のために血管の一部が細くなります。また先天性に大動脈の一部が狭くなる病気も同様なことがおこりますが、このような状態では狭くなった部分の抵抗の増加のために、この部分より心臓側の上流の血圧が上がり、上流の部分だけ、つまり上半身だけ高血圧になります。また動脈炎が腎動脈におよぶと腎血管性高血圧も合併して全身の高血圧も生じます。
このような場合、当然血圧を腕ではかると高く、足の血圧は低いので差がでてきます。左右の血圧が異なることもあります。また、狭くなった血管の部分に血液の流れの渦ができるため、体の表面から血管の雑音を聴診器で聞くことがあります。